故郷を思い出す居酒屋

故郷を思い出す居酒屋

 大学入学や就職をきっかけとして故郷を離れて上京してくる人も多いと思います。そして、仲間ができ、東京の生活にも慣れ、「都会人」となって忙しさにかまけてだんだんと故郷のことを思い出さなくなってきたちょうどその時期に、その仲間と連れ立って居酒屋などに行くことで、不意に故郷のことを思い出すタイミングというのがあります。

 

 

 

たとえば、自分の地元の地酒がそのお店に置いてあったのがすっと目に入ったりすると、なんだか田舎のことが妙に懐かしくなり、地元にいた当時にはほとんど飲んだ経験がなかったそのお酒を注文して、仲間から「あれ、なかなかシブい趣味があるんだねぇ」などと驚かれたりするのも居酒屋における一興であるという気がします。

 

 

 

もちろんお酒だけではなく、煮物などのちょっとした料理に舌鼓を打っているとこきに、なんとも言えずノスタルジックな思いに駆られたりするのも、居酒屋のうれしさということができるでしょう。
居酒屋というのは、「そこそこ安くてそこそこおいしい」という、いかにも現実的な目的が「合格」なわけですが、しかし居酒屋の店内にいるときには、都会にいる間に決して見ることができない「故郷の夢」を垣間見ているような気持ちになることができるのです。その意味で、私は居酒屋という場所は夢の世界であると思っています。

 

 

 

ときどきどうしても居酒屋に行きたいというあふれ出る気持ちを抑えることができなくなりますが、それは忘れることができない夢を見るためなのではないのかと、そんな気がしています。